正遷宮
正遷宮(写真は平成17年の正遷宮のものです)
三輪神社では、二十五年を式年として正遷宮が行われてきました。この神事は、神社の本殿の造営、修理に際し、御神体を遷すときに執り行われます。
まず、本殿から権殿に移すのを仮殿遷宮、または仮遷宮といい、修理が完成したときに権殿から本殿にまた御魂をもどすことを正遷宮といっています。この神事は宮司と氏子総代とによって深夜に執り行われます。
三輪神社の正遷宮は、江戸時代にも行われていたようですが記録として把握できるのは、明治33年(1900)5月3・4・5日の三日間に行われた以降のものです。この正遷宮は、式年の年数や規模こそ違え、元は伊勢神宮の式年遷宮をまねて始まったものではないかといわれています。伊勢では20年ごとに神宮を全部建て替えますが、地方の中核神社では25年ごとに部分修理をするところが多いようです。
正遷宮には莫大な経費がかかります。事業費は氏子たちの寄付によってまかなわれます。これらはおもに神社本殿などの修理と、正遷宮祭の三日間に行われる行事の必要経費に使われます。この祝賀行事のことを地元の人たちは「賑やかし」と呼んでいます。
この賑やかしというのは、幟差しや、山車、稚児や砂持ち行列などで、神社にお祝いに行くことの総称です。工夫をこらした飾り付けの山車に御餅を積み、これを境内で撒いたり、特設舞台で地元の皆さんによる演芸大会も開かれます。また、砂持ちは幼稚園までの男女児によって行われます。これはもともと神社境内へ砂を運ぶ地均しの一役でしたが、現在は幼児によって形式的に行われています。総事業費の内で社殿の修理費より、賑やかしの費用の方が多くかかる年もあったそうです。
正遷宮はおおむね四月中旬の三日間に行われます。これは一年中で一番気候も穏やかで、農家も比較的忙しくない時期に当たるため、このような日取りが選ばれます。日取りを決めとき、何より農家のことが考慮されるのは、昔は農家を中心とした氏子が多かったため、今でもその伝統が続いているということです。近年では三日間のうちに必ず日曜日を入れ、より多くの人々にこの正遷を祝ってもらっています。
初日は式典が催され、第二日日は招待した近在の落による「賑やかし」があり、最終日は地元の氏子による賑やかしが行われます。この賑やかしは神社境内周辺の混乱を避けるため、それぞれ時間を決めて奉納されます。幟差しはいわば賑やかしの華ともいわれています。