幟差し
幟差し神事(写真は三田天満宮正遷宮に奉納したときのものです)
幟差し神事というのは、三田地方で25年に一度の正遷宮の改修が終わった神社へ、近在の集落(区)が祝意を表して幟を奉納する民俗行事のことをいいます。最近では市内の特別行事や市外のイベントなどにも幟差しが参加しています。この行事は江戸時代に始まったといわれており、三輪区のほか、高次、山田、桑原、川除、北区、南区、貴志、上下深田、池尻などでも幟差しが保存継承されています。
行事は集落によっても違いますが、三輪区では子供たちの手拭幟に続いて、長さ十㍍近くもある竿に幟をつけた若者の列がパレードの形で練り歩く勇壮なものです。奉納の道中で幟をたすきに取ったり、梯子の上で幟を差したり鳥居越をします。囃子を受け持つ大太鼓、鐘などに特別の飾り付けを行い(しめ飾り結び)、行事を一段と盛り上げています。
この幟は直径約5cm、長さ十㍍近くもある青竹に、一反の木綿を3~5本取り付けたもので、その本数によって三反幟とか五反幟と呼ばれています.。一反というのは大人一人前の衣料に相当する布吊で、普通並幅で鯨尺二丈六尺(約8.5m)の長さがあります。各集落からこの傾が数本献納されますが、奉納するにはかなりの費用と練習の積み重ねが必要です。
平地では一人の幟差しは5、6分間ほどで交替しますが、このとき幟を渡す作法があります。それは昔の大名行列でのやりとりのように、数メートル離れた相手に投げて渡します。それだけでなく、時には後ろの相手に投げて渡すこともあります。渡された人はそれをうまく片手で受けてすぐに差すのです。この技も幟差しの基本的なものの一つです。
昔から「幟を奉納する途中では、幟を絶対地面につけないように」と言い継がれて
います。神社へ奉納する幟は神聖なものと考えられ、お祝いに持って行く幟を汚れた地面につけないという配慮からでしょう。また、神社近くでは石鳥居の上を越すことになっていますが、このとき神聖な鳥居に梯子を絶対触れないようにして越さなければなりません。鳥居の下を通ると幟を倒して行くことになります。
どちらも昔の人が縁起をかついだのが、幟差しの特異技の一つとして受け継がれているようです。1ヶ月にわたる厳しい練習を積み重ねて、やっと本番で無事に演じ終えるようになるのです。