友さんぎつね

友さんぎつね

三輪神社の裏を通って上野のゴルフ場へ行く道は、昔は花山院へお詣りする巡礼がよく通る道であった。今では舗装されているが、以前は両側が松林で、さびしい山道だった。とくに、小さな池が二つ並んでいる上野のひょうたん池あたりでは、雨模様の夜など、「きつねにだまされる」といううわさが絶えなかった。

冬の寒いのこと。三輪の「地家」に住む源六が母親に連れられて来迎寺にお説教を聞きに行った。お説教が終わると、村の人たちがこんな世間話を始めた。
「ひょうたん池のほとりに、友さんぎつねが住んどるらしいな。」
「そのきつねは、通る人をだましたり、巡礼をおどしたりして、みんなを困らせとるそうや。」
この話を聞いた源六は、十二、三才の子どもでありながら、ひとりできつね退治に出かける決心をした。

ある夜、源六は母親に気づかれないようにそっと を抜 け出した。その日は月もなく北風が吹いて、星も凍てるような寒い晩であった。暗い中、源六は旅に疲れた巡礼の姿をして、ひょうたん池の堤に腰をおろし、友さんきつねが現れるのをじっと待っていた。しばらくすると、近くの熊笹が、ざわざわとなりだした。
「しめしめ。友さんぎつねが出てきたぞ。」
と、源六は心をときめかした。

間もなく、たくましい男が現れて、
「もしもし、かわいそうな巡礼さん、わしはこれから小野の方へ帰るので、送ってあげよう。」
と、親切に声をかけてきた。
「この時だ!」
源六はきつねの尻尾をしっかりとつかまえ、放さなかった。友さんぎつねはとうとう正体をあらわした。
「これからは、決して人をだましたり、人のものをとった りしませんから、どうかこらえてください。」
と、あやまり、悲しそうにケーンケンと泣きながら山の方へ逃げて行った。

一方、村では、源六が一人できつね退治にひょうたん池へ行ったことがわかり、大さわぎとなった。半鐘をうちならし、太鼓をたたいて村人を集めた。人々が持つ赤い提灯の灯は何十となく列をなし、山道を登っていった。そこへ源六が、きつねの尻尾を高くふりながら、得意そうに山道を降りてきた。源六の無事な姿をみて、母親は泣いて喜んだ。また、いつもはわんぱくで、村の評判があまりよくなかっ源六も、このことですっかり株を上げたという。

尻尾をなくした友さんぎつねは、どこへ行ったのか、ひょ うたん池のほとりでは、それっきり姿が見られなくなった。今でもこのあたりは薄気味が悪い所で、夜遅く通ると気持ちが落ち着かなくなったり、立ち止まってしまうことが あるとかー。